政府は11日に
新型コロナウイルスの水際規制を大幅に緩和する。
インバウンド(訪日客)の回復が加速し、同時に始まる
全国旅行支援と合わせて経済の底上げにつながるとの期待が膨らむ。航空や旅行業界は増便や商品拡充で、待ち望んできた今回の本格的「開国」に備える。
◇円安も後押し
「待ちに待った緩和だ」。全日本空輸の
井上慎一社長は先月下旬の記者会見で、水際規制の緩和を歓迎。円安が進み訪日旅行の割安感も増しており、「日本に来たいという思いをあちこちで耳にする」と旅客増に自信を見せた。
今回の緩和では、入国者数上限が撤廃され、個人旅行とビザなし渡航も解禁。2020年に広がったコロナ前の運用に大きく近づく。
全日空は今月末から羽田―香港線を再開。羽田―台北線を増便するなど年内に国際線の運航率をコロナ禍前の44%まで戻す。日本航空も今月末に香港発羽田着の便を再開。12月からは成田―フランクフルト線を毎日運航する。海外航空各社にも日本路線再開の動きが出てきた。
一方、旅行業界ではJTBが人気の高い箱根や京都・奈良などのバスツアーを今月から本格的に開始する。
訪日客数はコロナ禍前の19年、過去最高の約3188万人に到達。宿泊や買い物など訪日中の消費額は総額4兆8135億円に上り、日本経済への貢献度を高めていた。しかし、水際規制で日本は事実上の「鎖国」状態に。昨年の訪日客数は25万人に急減し、4兆円超の「国益」が失われた。 毎月の訪日客数は3月以降の段階的な水際規制の緩和で回復傾向にあるが、19年比ではまだ1割にも満たないのが現状。今回の措置でようやく「日本経済の浮揚につながる」(JTB)との期待は強い。
◇本格回復には時間
ただ、課題も残る。特に入国時には今後もコロナワクチンの3回接種か陰性証明書のいずれかが必要で、「訪日のネックになる」との懸念がある。また、コロナ前に全体の4割弱を占めた中国・香港からの訪日客数は中国政府の「ゼロコロナ政策」で急回復が見通せない。 大和総研は、訪日客数の戻り幅は19年比50%減程度が当面の目安だと分析。「本格回復には時間を要する」とみている。 コロナ禍の打撃が深刻な旅館やホテルにも、観光復活を手放しで喜べない事情がある。人材派遣業のダイブ(東京)が全国160事業者を対象に先月実施した調査では、88%が「人手不足を感じている」と回答。人材確保が困難となる中、急激な需要増への対応を不安視する声もある。
配信 参照: https://news.yahoo.co.jp/articles/a46de95aa94a43f31ec186ec960001de0b9e8f21